ショーツは、足口の位置によってずれ方が変わる
座る・立つ・かがむなどの動作では、お尻や太ももの形が変わります。 そのとき、ショーツの足口が身体のどこにあるかによって、布が引っ張られる方向やずれ方も変わります。
ここでは、衣服の開口部で起こるずれの研究を確認しながら、 なぜショーツの足口をお尻の丸みの途中ではなく、お尻と太ももの境目付近に置くのかを考えます。
足口の位置と着くずれ
ショーツの足口は、
なぜ位置が重要なのか。
足口の位置は、動いたときにショーツがずれたり食い込んだりしやすいかどうかに関係します。
身体の形が大きく変わる場所の途中に足口があると、動作の影響を受けて衣服の位置も動きやすくなります。 足口は、きつさ・ゆるさだけでなく、身体のどこに置くかが重要です。
このページで分かること
- 動くと、身体と衣服の間には位置ずれが生じます。
- 衣服の研究では、ずれはウエストや足首などの開口部で大きくなりやすいことが確認されています。
- 脚の開口部は、身体の変形が大きい場所の途中に置かないことが、ずれや食い込みを減らすうえで重要です。
- トラタニでは、後ろ身頃をお尻と太ももの境目付近まで伸ばし、その位置に足口がくるようにしています。
動くと、身体と衣服の位置はずれる
衣服は身体表面に貼り付いているわけではありません。身体の変形に衣服がそのまま追従できないと、相対的な位置ずれが生じます。
2008年の「パンツの着くずれに関する研究」では、人体とパンツに付けた点の動きを三次元動作解析システムで追い、 立位から椅子に座る動作や、しゃがむ動作で、身体と衣服がどのようにずれるかを調べています。
その結果、ずれはウエストや足首などの 開口部で大きくなりやすく、皮膚が大きく伸びる方向へ衣服が移動する 傾向がみられました。
身体は変形する
股関節や膝が曲がると、皮膚や軟部組織の表面は伸びたり縮んだりし、各部の距離や形が変わります。
衣服は同じ量だけ変形しない
生地の伸び、ゆとり、パターンによって追従の仕方が異なるため、身体と衣服の間に位置の差が生じます。
脚の開口部をどこに置くかで、
ずれ・食い込みは変わる
ガードル研究では、身体の変形が大きい場所を衣服の端や開口部が横切ることが、着心地に影響していました。
1991年の「ガードルの衣服圧に関する研究」では、素材・パターン・構成の異なるガードルを着用し、 動作時の不快感と衣服圧を調べています。
試着結果では、姿勢変化に伴って身体の変形が大きい 脚付根部や大腿部を中途半端に被覆すると着心地が悪くなりやすい ことが確認されました。 研究では、脚の開口部を身体の変形が大きい位置に中途半端に置かず、 開口部の位置を変えることで、ずれや食い込みを減らす考え方が示されています。
研究から見えること
開口部は、
身体のどこに置くかが重要。
開口部の締め付けだけではなく、身体の変形が大きい場所をどのようにまたぐか、あるいは避けるかという設計が、ずれや食い込みに関係します。
足口がお尻の途中にあると、
動いたときに位置が変わりやすい
ここからは、トラタニがショーツを設計するときの考え方です。
一般的なショーツでは、後ろ身頃の下端が、お尻と太ももの境目より上に位置するものがあります。 その場合、後ろの足口はお尻の丸みの途中を横切ります。
トラタニでは、後ろ身頃の生地を お尻と太ももの境目付近まで 伸ばし、その位置に足口がくるようにしています。
お尻と太ももの境目まで包むと、
足口が上へ移動しにくい
トラタニでは、足口をお尻の丸みの途中で止めず、比較的変化の小さい太もも付け根付近で安定させることを考えています。
動くと形が変わる
座る・かがむなどの動作では、お尻の丸みや下側の形が変わります。
お尻より小さい
太もも付け根の周囲は、その上にあるヒップ最大部より小さく、形の変化も比較的小さい部分です。
境目で位置を保つ
足口が太もも付け根に合っていれば、その上の大きなヒップ側へ移動しにくくなります。
トラタニの後ろ身頃は、お尻と太ももの境目付近まで生地が届きます。 その下端が境目に位置することで、お尻が動いて形を変えても、ショーツの下端位置が上へ移動しにくいように設計しています。
お尻の形によっては、
境目で安定しにくい場合もある
足口の位置だけですべての人のずり上がりを説明できるわけではありません。
お尻の下側のふくらみが小さい場合など、お尻と太ももの境目で足口が十分に位置を保ちにくい体型もあります。 また、サイズ、太もも付け根の寸法、生地の伸び、足口の仕様によっても収まり方は変わります。
そのためトラタニでは、後ろ身頃の形だけでなく、ヒップと太もも付け根の寸法を使ったサイズ設定や、生地の伸縮性も含めてショーツ全体を設計しています。
足口の位置は、
ずり上がりを考える一つの重要な要素
「締め付けるから止まる」のではなく、身体形状と動作に対して、どこで衣服を安定させるかという考え方です。
研究で確認できること
動作すると人体と衣服の間に位置ずれが生じ、ずれは開口部で大きくなりやすいこと。 また、脚開口部の位置がずれや食い込みに関係すること。
トラタニが設計で行っていること
後ろ身頃をお尻と太ももの境目付近まで伸ばし、足口をお尻の丸みの途中ではなく、その境目付近に置くこと。
足口がお尻の途中にあるショーツが、動いたあとに食い込む仕組みは、パンツがお尻に食い込む原因で説明しています。
トラタニのショーツづくり
足口の位置を考えた立体裁断
足口がどこにあるかは、身体を動かしたときのショーツのずれや収まり方に関係します。トラタニは、後ろ身頃をお尻と太ももの境目まで延ばし、足口がその境目に沿ってフィットする独自の立体裁断を採用しています。
足口を強く締め付けることだけに頼らず、ショーツの形そのもので食い込みやずり上がりを抑える考え方です。


関連する研究
参考にした研究
- 大村知子・山内幸恵・平林優子「パンツの着くずれに関する研究」日本家政学会誌 59巻6号, 393-402, 2008. DOI: 10.11428/jhej.59.393
- 間壁治子・百田裕子・三野たまき・上田一夫「ガードルの衣服圧に関する研究」繊維製品消費科学 32巻9号, 424-438, 1991. DOI: 10.11419/senshoshi1960.32.424
- Kunzelmann F, Kyosev Y, Sadretdinova N. Investigation of the Interaction between Protective Clothing and Body During Motion Actions with Integrated Multisensory Scanning System 4Dsense. 3DBODY.TECH 2023. DOI: 10.15221/23.21